新体制の始まり
前回紹介したオーパルカヌーチームの指導方針。初めに書かれているのは『カヌースクールに通っている目的・目標・計画を子ども自身がしっかりと立てる』だった。チームが新体制となった9月。先ずはそこから全てが始まる。オーパルカヌーチームの江口監督へのインタビューを行った。
【目的】・・・成し遂げようと目指す事柄。行為の目指すところ
【目標】・・・目じるし。目的を達成するために設けた、めあて。的まと。
(広辞苑調べ)
何となく似たような雰囲気で使っているこの二つの言葉。はじめにその違いを明確にしておこう。「目的」は自分が何をしたいか、どうなりたいかといったやや抽象的な未来像、最終的になっていたい状態。「目標」は目的を達成する為に成し遂げなくてはいけない成果。
目標設定
江口:オーパルカヌーチームでは選手に具体的な数字として出せる形で目標を立ててもらいます。具体的には全国大会で1位だとか2分を切るといったものです。その目標も3段階あり「長期」「中期」「短期」と分かれます。長期は一年間、次の年の自分が一番狙いたいところ。「中期」は半年、長期の目標を達成する為に半年前にどのようになっていたいか。「短期」は今日でも良いし、明日でも良い。とにかく達成出来るもの。自分が頑張れば達成出来ると思うもの。オーパルでは練習前に短期目標(課題)をホワイトボードに記入し、練習後二人一組になって今日の良かった所、悪かった所を話し合い、自分の目標に対して何点だったか評価をしてもらうようにしてます。
【長期】・・・一年間。次の年の自分が一番狙いたいところ。
【中期】・・・半年後。長期目標を達成する為に半年前にどうなっていたいか。
【短期】・・・1〜2日。自分が達成出来ると思うもの。
目的(何の為に目標を達成したいのか)
江口:目標よりも大事なものは目的だと思ってます。例えばダイエットで5キロ痩せたいという目標を立てました。でも挫折する人はとても多くいる。それは目的が無いから。何の為に痩せたいのか、痩せてどうなりたいのかが見えて無い。では、何の為に目標を達成したいのか。何の為に全国大会で優勝したいのか。
目的を考えてもらう際に言うのは、自分の為と自分以外の為の目的を考えてもらうこと。それは多ければ多いほど良い。自分の為は比較的出てきやすい。「メダルが欲しい」「モテたい」「有名になりたい」「褒められたい」「優越感に浸りたい」等々。でも自分以外の為となると意外と出てこない。例えば「お世話になった人に恩返しがしたい」とか「オーパルカヌーチームを有名にしたい」とか。そういった自分以外の為の目的というのもしっかりと考えて欲しいと選手には伝えています。
目的はどうしても自分の為のものになりがちです。むしろ自分の事しか考えてない。でもそうではなくて、カヌーは自分一人でやってるのではなく、色々な人のお世話になる事でやれている。選手にはそこに気付いて欲しいという想いもあります。多くの人が関わっている、だから頑張れる事もあるという事も。
オーパルカヌーチームでは今回紹介した「目標」「目的」の設定以外にも、それらを実行する手段としてロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が使用した「オープンウィンド64」を取り入れ、目標達成に必要な要素を明確にするという事も同じタイミングで行なっている。
自ら目的と目標を明確に設定し、それを日々の短期目標(課題)に落とし込み、評価し修正を加えながら前進する。これは年齢を問わず成長するのに必要な能力であると思うが、日々これを意識しながら行動できている人がどれだけいるのか、私自身、今回の監督インタビューを通じて多くの事に気付かされた。オーパルカヌーチームでは多くを与えられない。その代わり、とても大きなものを身につけるチャンスは与えられている。これらは生まれつき持っているものではなく、誰もがトレーニングによって身につける事が可能なものだと思う。成長したいなら身につけたい。